本当に彼らがマレーシアのマラッカに移住したのかどうかも、移住していたとしても今もそこにいるかどうかも分からなかったが、手がかりはそれだけだった。とにかく現地に行ってみるしか方法がなかった。
日本からクアラルンプールに飛んで一泊し、翌日マラッカ行きのバスに乗り込んだ。おぼろげな記憶だったが見せてもらった写真の一枚には運河のような川とその両岸に建つ植民地風の建物が写っていて、マラッカ市内で川といったらおそらくオールドタウンの一角だろうとあたりをつけた。もし自分が彼らだったらどんな所に出入りするだろうかと考えながらザックを背負ったまま街路を歩き、雰囲気のいい「ラズカシミール」という一軒の雑貨屋に入った。
自分は日本からやってきてピーターという名前の白人のアメリカ人の知り合いを探している。奥さんは日本人で二人の年齢は70歳ぐらいだ。あなたは彼らのことを知りませんか?そう店主に質問すると、店の主人は笑ってよく知っていると答えた。「あなたは正しい場所で正しい質問をしている」そう彼は言い、携帯電話を手に取り、友人と名乗る日本人が訪ねて来ていると伝えて一言二言話すと僕の名前も確認せずにあっけなく電話を切った。「すぐここに来るよ」彼はそう言い、本当にすぐにピーターが店に現れた。
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